15.胃ろう栄養法
(1) 準備するもの
・ボタン型カテーテルの場合、接続チューブが必要になる。
(2) 手順
@石鹸で手を洗う
Aミルクまたは栄養剤を用意する(常温で良い)
B注入中の嘔吐や誤嚥を防ぐため、子どもの状態に合わせて体位を整える
Cイルリガートルのクレンメ(ローラーの部分:滴下量を調整する器具)を閉める
Dミルクまたは栄養剤をイルリガードルの中に入れ、滴下筒を2、3回押し、滴下筒の中を1/2くらい満たしたらクレンメをゆっくり緩め、チューブ内をミルクまたは栄養剤で満たす
E 注入前には、カテーテルの位置や固定の確認、胃ろう孔の観察をする
F ボタン型カテーテルの場合、接続チューブを接続する(接続チューブのクレンメは閉じておく)
ボタン型カテーテルと接続チューブの印を正確に合わせてパチンと手応えがあるまで押し入れる。接続チューブを3/4回転し、接続が外れないようにロックする
・ボタンの部分を強く押したり、引っ張ったりしないようにボタンの部分を指で挟んでしっかり保持して行う。ボタンが腹部を圧迫しないように注意。
G チューブに注射器をつなぎ、接続チューブのクレンメを開けて胃内容物を注射器で引き、前吸引の量と性状を確認する
注入前には胃内の空気をできるだけ引いておく
H 前吸引が終わったら接続チューブのクレンメを閉じて注射器を外す
I チューブとイルリガートルを接続し、クレンメを開け、速度を調整する
J 落下速度を調整し、30分〜1時間かけて注入する(速度については主治医の指示通りに行う。)
K 注入中は、吐いたり、お腹が急に張ってきたりしないか注意し、症状が出た場合は注入を中止し様子を観察する
L 注入し終わったら、5〜10mlの白湯を注入する
M 注入後1時間は上半身を挙げ、右向きもしくは顔を右に向けて安静にする
N 使用したイルリガートル、注射器はよく洗い、乾燥させる
【胃ろうによる経管栄養の合併症と対策】
症状 |
対策 |
肉芽形成 |
清潔の保持に努める 固定方法の見直しと強化 処置が必要になる場合があるため早めに受診 |
胃ろう孔からの漏れ |
漏れがひどい場合は早めに受診 |
胃出血 |
固定が強くないか確認 出血が続く場合は早めに受診 |
発赤 |
石鹸できれいに洗い、よく乾燥させる 固定が強くないか確認 胃ろう周囲の発赤、びらん、出血の場合早めに受診 |
カテーテルの詰まり(チューブ型の場合) |
注射器で吸引 白湯を流す(小さい注射器の方が圧がかかって流れやすくなる) カテーテルの根元からしごく 改善しなければすぐ受診 |
カテーテルが抜けてしまったら |
@ 入ってるカテーテルより少し細めのチューブ(吸引チューブ、導尿用カテーテルなど)を5cm程度挿入し、テープで固定してすぐ受診 A バルーンタイプの胃ろうカテーテルであれば、バルンの水を抜いてそのチューブを再挿入してすぐ受診 |
【日常生活での注意点】
1 スキンケア
固定をしっかりしておけばそのまま入浴してもかまわない
一般的に水圧より腹圧の方が圧が高いので、胃ろう孔からお湯が入ってくることはない。胃ろうの周りは弱酸性の石鹸でよく洗う。入浴したあとは水気を拭き取り、しっかり乾燥させる。
シャワーや入浴の後の胃ろうの周りの消毒は特に必要ないが、子どもによってはガーゼ、ティッシュペーパーなどで保護をしても良い。
2 使用器具の洗浄方法
注入器具は十分洗浄し、よく乾燥させてから使用する。
濡れたままだと細菌繁殖の原因になる。
3 お口のケア
口から食事をしていない人もお口のケアは必要である。口の中が汚れたままでいると細菌が繁殖して肺炎や気管支炎などの合併症が起こりやすくなる。
<引用・参考文献>
(1) 前田 浩利 編:小児在宅医療ナビ、南山堂、2013
(2) 小川 勝彦 :重症心身障碍児・者医療ハンドブック、三学出版、2010
(3) 沖 高司、熊谷 俊幸編:小児・障害児(者)のための在宅医療マニュアル、金芳堂、2008
(4) 横浜「難病児の在宅療養」を考える会 編:医療的ケアハンドブック、大月書店、2009
(5) 松石 豊次郎 杉本 健郎 編:医療的ケア研修テキスト、クリエイツかもがわ、2006